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地球の肺を守るために~コンゴ熱帯雨林保護の現場から(第2回)コンゴ熱帯林保護に道筋=大仲幸作
昨年の暮れにかけて、日本においても大きく報道された第26回気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)ですが、国連の報告によれば、気候変動対策への機運の高まりなどから、コロナ禍にも関わらず、COP史上最大の参加者(4万人)を記録したとのこと。
今回のCOPでは、主催国である英国、そしてバイデン大統領率いる米国の積極的な姿勢などから、各国の温室効果ガス排出削減目標の積み上げやパリ協定の実施ルールの決定など従来型の交渉と併せて、課題・分野ごとの野心的な目標設定についても、民間セクターや一般市民などの参画の下で活発に議論が行われました。中でも石炭火力をめぐる交渉は会期延長を伴った非常に激しいものとなったことは、日本でもすでに報道された通りです。
コロナ禍にも関わらず史上最大の規模で開催された英グラスゴーのCOP26、SDGsや気候変動問題への世界の関心の高さを改めて認識した。
では「森林」については、どういった成果が得られたのでしょうか。森林問題は、特にこの数十年間、深刻な減少が続いている途上国の森林、すなわち「熱帯林」にスポットが当たりました。熱帯林の減少をいかに食い止めるのか...。この課題が主催国である英国のジョンソン首相の肝いりで、各国首脳が列席するサミット初日に議論されたのです。
その結果、首脳会議では世界の森林(特に熱帯林)に関して大きく3つの事項について合意されました。1つ目は、2030年までに森林減少ゼロを実現すること。欧米諸国と政治的対立が続く中国やロシアなど含め、130以上の国々によって「森林及び土地利用に関するグラスゴー首脳宣言(Glasgow Leader's Declaration On Forest And Land Use)」が署名されたことに大きな政策的意義がありました。この合意によって森林保護は思想や信条に関わりなく人類共通の課題であることが改めて証明されることとなりました。
2つ目は、日本を含む先進諸国や国際企業などが、その対策のための財源として192億ドル(約2.2兆円、そのうち日本は2.4億ドル、約270億円の拠出を約束)の拠出を約束したこと。途上国の現場からは「まだまだ足らない」といった声も聞こえてきそうですが、それでも金額の裏付けがなかったり、桁が1つ、2つ異なるレベルであったりした、これまでの環境宣言と比べれば前向きに評価できるでしょう。
そして3つ目の合意は、何と私たちが保全活動に取り組むコンゴ盆地に対して焦点が当てられました。その保護、そして持続的な管理を図っていくため、「コンゴ盆地共同声明」が日本を含む主要先進国11か国と国際企業であるアマゾンによって署名されたのです。
関係者によると、ジョンソン首相は今回のCOPにおいて、世界最大級の森林減少のホットスポットであるにも関わらず、国際社会の課題への認知、そして支援が相対的に遅れているコンゴ盆地の熱帯林保全に道筋をつけることに強くこだわったとのこと。実際、サミット会場では、それを裏付けるように、同首相、そして米国バイデン大統領などと並んで、コンゴ民主共和国のチセゲディ大統領がステージに登壇し、途上国を代表して熱帯林保全の重要性を説く基調演説を行いました。すなわち、今回のCOPでは、森林問題における途上国代表としてコンゴ盆地にスポットが当てられた訳です。
今回、コンゴ環境省のトイランベ次官が(一連の対応が遅れる中で)COP初日のこのサミットへの参加に強いこだわりを見せた背景には、コンゴ盆地の保全に関する今回の国際合意がありました。
では、コンゴ民主共和国は国際社会とのこうした約束を実現するため、一体どのような対策をとっていく必要があるのでしょうか。コンゴのような最貧困国では、熱帯林の伐採や地下資源の開発によって得られる経済的利益は喉から手が出るほど欲しい国家財源でもあります。また森林周辺のコミュニティーでは、近年人口が急増し、食料生産のための農地開発や薪炭を得るための森林伐採が加速化しています。そんな中でチセゲディ大統領は、現在、国土の1割程度しかない保護区を3割まで拡大し、北海道の面積に匹敵する8万km2の森林再生を実現することなどを同国の気候変動対策の柱として打ち出しました。
しかし、コンゴ政府のやる気だけでは、この野心的な目標が達成できないことは火を見るより明らかです。目標達成のタイムリミットまで既に10年足らず。「地球の肺」の持続的管理という地球規模課題に対しては、全世界が当事者であるとの認識が必要不可欠です。目標実現に向けた支援を固く誓った日本を始めとした国際社会にとっても、これからが支援の正念場となります。
COP26リーダーズサミットのイベントにて英ジョンソン首相、バイデン米大統領と共に登壇したコンゴ民主共和国のチセゲディ大統領(右から2人目)=UNFCCC提供
(つづく)
大仲幸作(おおなか・こうさく)1999年に農林水産省入省。北海道森林管理局、在ケニア日本大使館、農水省国際経済課、マラウイ共和国環境省、林野庁海外林業協力室などを経て、2018年10月から森林・気候変動対策の政策アドバイザー(JICA専門家)としてコンゴ民主共和国環境省に勤務。
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